人気ナンバー1の脱毛器「イーモ」ブログ:2017-09-07
お母さんは、夕方食の準備で忙しく動いている…
その傍らには、
好奇心いっぱいの目をキラキラと輝かせながら、
お母さんのクチ元をもどかしそうに見つめる、
幼ない頃のお姉さんと、俺と妹がいました。
そんな俺達に、
お母さんはやさしい視線を注ぎながら、
「次は少し小さな声にして、こんな風に歌うのよ」
と言って、
童謡を歌ってくれます。
いつものように俺達三人は、
夕方食の用意をあわただしくしているお母さんを、
取り囲むようにしながら、つきまとっていました。
当時の我が家では、
汚れた野良着のままでも、
スグにご飯の仕度に取りかかれるように
大きな流しが屋外に設けられていました。
いつ頃からか、記憶にはないけれど、
夕方になり、お母さんがその流しの前にいる時間帯になると、
俺達姉妹は、その場所に集まるのが日課でした。
昭和二十年代後半、敗戦のあとの日本は、
めざましい復興が着々と進んでいましたが、
ほとんどの国民は日々の生活に追われ、
ただ生きることに精一杯のような時代でした。
そんな中にあって、
お母さんは日々のように、俺達に向かって
「さあ歌ってごらん、いい歌よ」
と言いながら、一小節ずつ、
クチ移しでいろんな童謡を教えてくれたのです。
お母さんは若い頃、教師をしていた関係で、
家にはたくさんの童謡の歌集がありました。
戦後の混乱した社会ではあったけれど、
我が子には、美しい抒情たっぷりな童謡を歌わせて、
心豊かで明るい子どもに育てたい…という
お母さんの切ない願いがあったに違いありません。
そんなお母さんの思いを知る筈もなかった俺達でしたが、
どんなに遠くまで遊びに出かけていても、
まるで磁石に吸い寄せられていくかのように、
かけ足で家に帰ったものでした。